離婚公正証書

離婚における財産分与とは?現金・不動産・期間について

財産分与とは

財産分与とは、離婚に伴い夫婦共有財産を分配することです。
夫婦共有財産とは、婚姻期間中に夫婦の扶助協力により形成した財産のことです。
昭和の時代は、女性の家事労働が過小評価されていたため、女性に不利でしたが、現代は、等しく分配するのが原則です。

財産分与の根拠となる法律

財産分与については、民法に規定されています。
■財産分与(民法第768条)

財産分与の対象

原則的には、夫婦共有財産なら、現金、不動産、動産、有価証券等、全て財産分与の対象です。後述いたしますが、住宅ローン、オートローン(車のローン)、その他婚姻生活の維持に必要な負債につきましても財産分与の対象です。
夫婦共有財産に該当しない婚前の財産や親からの相続財産等の特有財産は、財産分与の対象になりません。

財産分与の期間

原則的には、婚姻期間中が財産分与の対象期間です。但し、婚姻届の届出以前から同居し、事実上の夫婦関係を形成していた場合は、事実上の夫婦関係を開始したときを起算点とすることがあります。また、婚姻関係が破綻し、夫婦が別居を開始した場合には、別居後の期間を財産分与の対象期間から外すことが多いです。

現金の財産分与

容易に分配が可能な現金の財産分与は、一番シンプルです。

<例>
夫婦共有財産として、夫名義の銀行口座に300万円、妻名義の銀行口座に100万円、夫婦の居宅の金庫に100万円を保管していたとします。
この場合、300万円、100万円、100万円を合計し、500万円が財産分与の対象となるため、夫250万円、妻250万円を得ることになります。

不動産の財産分与

不動産の財産分与は、住宅ローンが絡むことが多いため、実務上やや複雑です。
対象不動産を売却する場合には、その売却価額の残余金(売却益)を分配することになります。対象不動産を売却しない場合には、対象不動産の時価(実勢価格)を算定します。
そして、対象不動産を取得する一方が他方に対して、その時価の5割に相当する金員を支払うことになります。

<例>
対象不動産の時価が2000万円とし、その対象不動産を夫が取得する場合、2000万円の5割(1000万円)を妻に支払うことになります。このケースのときに800万円の住宅ローンの残りがあるときには、2000万円から800万円を差引き、残りの1200万円の5割(600万円)を妻に支払うことになります。

動産の財産分与

動産とは、不動産以外の物のことをいいます。
車、貴金属、家具、家電製品等をイメージしてください。
動産の財産分与も、不動産の財産分与と同じように考えます。
対象動産を売却する場合には、その売却価額の残余金(売却益)を分配することになります。対象動産を売却しない場合には、対象動産の時価(実勢価格)を算定します。
そして、対象動産を取得する一方が他方に対して、その時価の5割に相当する金員を支払うことになります。

<例>
車の時価が200万円とし、その車を夫が取得する場合、200万円の5割(100万円)を妻に支払うことになります。このケースのときに80万円の車のローンの残りがあるときには、200万円から80万円を差引き、残りの120万円の5割(60万円)を妻に支払うことになります。

負(マイナス)の財産分与

マイナスの財産も財産分与の対象と考えます。

<例>
夫婦間の子の学費200万円を借り入れたとします。離婚時、夫婦共有財産が150万円の場合、150万円から200万円を差引きますと、マイナス50万円になります。この50万円は、原則、夫と妻が等しく負担することになります。

離婚公正証書における財産分与の条項例

現金の財産分与の条項
第○条(財産分与)
甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、金500万円の支払義務があることを認め、離婚届出の日から10日以内に乙の指定する金融機関口座に振込送金して支払う。
振込送金に要する費用は、甲の負担とする。

不動産の財産分与の条項
第○条(財産分与)
甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、下記の不動産(以下「本件不動産」という。)の甲の持分全部を給付するものとし、
本件不動産に係る住宅ローン債務が全て消滅してから、速やかに財産分与を原因とする所有権移転登記手続き(以下「本件登記手続き」という。)をする義務のあることを認める。
本件登記手続きに要する費用(司法書士の手数料・登録免許税)は、乙の負担とする。
     記
(主である建物の表示)
所 在  青梅市野上町
家屋番号 ○○番○○
種 類  居宅
構 造  木造スレート葺2階建
床面積  1階 ○○.○○平方メートル
     2階 ○○.○○平方メートル
(所有権に関する事項)
所有者  青梅 太郎
(土地の表示)
所 在  青梅市野上町
地 番  ○○番○○
地 目  宅地
地 積  ○○○.○○平方メートル
(所有権に関する事項)
所有者  青梅 太郎
以上

行政書士から一言
不動産に関する条項を設けるときは、対象不動産の登記事項証明書が必要になります。

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